施工のポイント
本工事は、下田港内の航路の切り替えを行うために、新たに防波堤先端部に設置する灯台の製作・据付け及び、港内防波堤にある既存灯台の撤去を行う工事です。
①灯台製作 ②灯台運搬・据付 ③既存灯台切断・運搬・解体 の3工程に分かれており、それぞれが建築・港湾・特殊解体工事の高度な計画・施工が必要となります。
また、灯台や港・防波堤の役割について理解を深めて頂くため、地域の方々を対象に現場見学会を開催しました。
①灯台製作
【内部空間のある八角錐】という特殊な形状のRC(鉄筋コンクリート)造の為、足場・鉄筋・型枠工事各々について高い加工・施工精度が必要となるため、数々の工夫を積み重ねて形を造っていきます。また、完成した灯台をクレーン船で吊って運搬・据え付けする為、様々なシミュレーションを行い、衝撃・振動への対策や吊りフックの位置検討などを行いました。
②灯台運搬・据付
完成した灯台をクレーン船で吊り、1㎞沖合の防波堤まで運搬し、あらかじめ開いている直径4mほどの穴に据付けする作業です。
波消しブロック等のコンクリートの塊と違い、外壁のタイルや手摺等の付属品で仕上げられている為、吊りワイヤー等が当たったり、据付時の衝撃で破損する恐れがあります。また、陸上のクレーン作業と違い、クレーン船での揚重作業は波の影響をとても受けるため、常に上下左右に1m以上に振られます。穴の大きさは10㎝程度しか余裕がなく、重量も90t以上ある為、据付のタイミングを誤ると衝撃も相当のものとなります。
事前にシミュレーション・打合せを何度も行い、様々な対策を行った上で、針の穴を通すような完璧な据付を行うことが出来ました。
③既存灯台切断・運搬・解体
既存の灯台は防波堤の先端にあり、重機・工事車両が進入出来ない為、ワイヤーソー工法により根元で切断し、クレーン船にて解体ヤードまで運搬します。
撤去した灯台は解体ヤードに下ろすときに横倒しにする必要があるのですが、上部が重く円形なので、荷卸し時に平面的に回転しブームが振られる恐れがあります。そこで、灯台据付作業用の吊枠を再利用する事により2点吊とし、さらに倒す方向を定めるきっかけを作るためにコンクリートの塊を用いました。
結果ブームが振れること無く、横倒し作業を安全に完了する事が出来ました。
灯台の製作・据付・撤去工事という、発注者・受注者でも経験者が希な工事をどのように進めていくか。新工法や新技術のような派手さはありませんが、今回の複雑な構造体は、規模が小さいが故の細かい工夫を積み重ねて形を造っていく面白さがありました。
国土交通省・海上保安部・受注者と様々な意見を出し合い三位一体となって、下田港の新たなシンボルとなる灯台を造りあげられた事を誇りに思います。
現場見学会の開催
灯台の製作完了に合わせ、国土交通省・海上保安部と弊社の合同で現場見学会を開催しました。
新設灯台は沖合に据え付けられる為、一般の方はなかなか間近で見る機会が無くなります。通常は足場がある時期に行うのですが、足場が邪魔になり、美しい建物全景を見て頂くことが出来ません。
そこで足場を撤去した後に、高所作業車を使用する事により、真上を含め様々な貴重なアングルから見学できる工夫をしました。また、灯台の外壁に使用されている赤いタイルを利用して、職員が手作りしたキーホルダーやマグネットの記念品配布やタイルのつかみ取り等も行い、大変好評でした。
工事詳細情報
工事名 | 平成30年度 下田港 灯台製作等工事 |
工期 | 平成30年9月19日~平成31年3月22日 |
発注者 | 国土交通省 中部地方整備局 清水港湾事務所 |